1786年9月 ゲーテはヴェネツィアを訪ねる前に、この町に寄り、2日ほど滞在しました:『イタリア紀行』。彼は円形劇場アレーナの保存状態の良さに驚き、「赤身がかった大理石でできていて、風化した部分は始終造りかえられ、全部が新しくみえる・・」と、ヴェロナ人の努力を讃えています。

 

アルプスから流れ出るアディジェ川に囲まれるように形成されたヴェネト州の中心都市。起源は古代ローマ時代に遡ります。16世紀に市域を拡大し城壁が作られました。ゲーテが訪れた円形劇場アレーナはローマのコロッセオより50年前、西暦30年ころ完成しました。このアレーナはほとんど固有名詞化するほど有名。いまは野外オペラが開催され、ローマのカラカラと並んで夏の風物詩となっています。地元産の赤みがかった大理石はアレーナだけではなく駅舎や大学の外壁・城壁の下部、などにも使われ、街全体に温かな雰囲気をもたらしています。

 

シェイクスピアはヴェロナを舞台に悲劇『ロミオとジュリエット』を書きました。現在はアレーナよりこちらの方が話題になっているようです。悲劇の舞台になっていることを観光的にアピールした市当局の決定は1907年のこと。13世紀の古い家を買い取り修復、ジュリエットの家として公開。この造られた観光スポットを観光客も嘘と知りつつ虚構を楽しむ、悲劇の背景14世紀の街の雰囲気を保っているからこそ、のことです。



ヴェッキオ宮にかかるスカリジェロ橋とジュリエットの家