「百の都市と千の鐘楼をもつイタリア・・・それはまた同時に、百の料理と千のレシピをもつイタリアでもある。地域の独自性と政治的分裂の長い歴史がもたらしたイタリアの食の伝統の多様性は、まさにイタリアを訪れる人々の目と舌に強い印象を与える最大の特徴である。」(M・モンタナーリ:食文化大学教授)


旅の楽しみのひとつに「名物料理を味わう」があります、これは国内の旅行にも言える事ですが、食の王国イタリアに行く旅行者にとって、「本場のイタリア料理を食べる」、は大きなモチベーションです。しかし、現地に行ってみれば「イタリア料理」と一括りに呼べるものは無く、各地方料理のみが存在する事に気が付きます。このコーナーでは、とりあえず、旅先のレストランの料理、ステイホーム中にいただいた家庭料理、などから見聞したことなどを紹介していきます。


各州の観光局パンフ、イタリア郷土料理集の中から頻度の高いものを選んで紹介します。食旅の参考に!

北部8州





スローフード運動の発祥地 ブラ を訪ねました(トリノから列車45分)


スローフード運動はブラ出身のカルロ・ペトローニ氏が始めた社会運動です。1986年ローマ・スペイン広場にファストフードの代名詞ともいうべきマクドナルドが出店したのがきっかけでした。このままではイタリアの伝統的な食材・食文化が消えていってしまう・・危機感がこの運動を生みました。日々の食べ物がどこから来ているのか考える、生産者と消費者を結ぶ、ことを大切にする運動です。スローフード協会はそのためにできたNPOです。


ローフード協会推奨のオステリア・ボッコンディヴィーノにはいりました。食卓は庭園の周りにゆったりと置かれ、落ち着いた雰囲気の中、食事を楽しむことができます。こんなに柔らかく薫り高いニョッキはお世辞抜きで今まで食べたことがなかった。また、サラダにかけたオリーブオイルの新鮮な甘みが野菜自身が持つ味わいをさらに引き立ててくれていました。料理を褒める文は難しい!(^^)! 本当に良いものを食べると心も幸福感に満たされることを実感できました。

トリノで3週間、借りているアパートのオーナーと借用期間のことで発生していた問題が解決したばかりで疲れ気味だったところなので、元気回復、スローフードはこういう効き目もあるんだ・・と思ったものです。スローフード協会のシンボルはカタツムリ、と言ってもゆっくり食べるということではなく、食生活をじっくり見直すという意味です。

 



イータリー(トリノ):地下鉄リンゴット駅 徒歩5-7分


スローフード協会も協賛しているイタリアの食材専門店イータリーを訪ねました。店舗のホームからそのコンセプトを紹介します。

イタリアン専門の多機能マーケットプレイス 2007年1月トリノに初の「イータリー・トリノ・リンゴット」が誕生しました。イータリーという名前はEATとITALYを融合させたもので、「EAT BETTER, LIVE BETTER(よい食事は人生をより豊かにする)」というミッションのもと、質の高い食品を、持続可能でリーズナブルな価格ですべての人に提供しイタリアの生物多様性を称え、食べて、買って、学ぶための、堅苦しくなく、自然体でシンプルな場所を提供します。


イータリー(ローマ):地下鉄ピラミーデ駅 徒歩10分



どの都市にもある市場、co-op、マーケットを覗けばイータリー同様、パスタでも肉類、乳製品でもなく野菜が一番目立つ所に置かれていて、売り場面積も広いことに気が付く。『食のイタリア文化史』(アルベルト・カバッティ著 岩波)で、13~16世紀の様々なレシピを見ることができる。権力を示す食べ物のシンボルは肉であったが、階層を越えた食文化の共通基盤は野菜であり、その利用法の多彩なところはヨーロッパの料理のなかでも際立った存在であった、とまとめられている。確かに現在でもヨーロッパの多くの国はイタリアから一番多く野菜を輸入している。比較的新しい時代の料理文献に登場する野菜の例にピーマン(アメリカ原産)17世紀とフィノッキオ16世紀がある。とりあえず、日本では珍しい食材のフィノッキオとバルバビエートラを栽培することからイタリア野菜の魅力に迫ってみたい。→イタリア野菜栽培記録



イタリア野菜栽培記録


バルバビエートラ

ラディッキオ(ズッケロ)

カペリーニとサラダ



イタリア野菜、ゴルゴ(バルバビエートラ:キオッジャ地方特産の根菜)、ラディッキオ(パン・ディ・ズッケロ)、フィノッキオ(今回は失敗)を種から育成、知人のシェフのご協力で、収穫したゴルゴとラディッキオを料理(カペリーニとサラダ)していただきました。目にに鮮やかな色どりと新鮮かつ柔らかな食感に感激しました。あらためて、イタリア料理に野菜は欠かせないことを再認識できました。

⇒現在、あらたな野菜(ズッカ)とフィノッキオ再挑戦中です。


13-14世紀のイタリア最古のレシピ集『リベル・デ・コクィーナ』(農村漁村文化協会発行「世界の食文化:イタリア」)によれば、野菜は身分の上下を問わず大量に食されるようになり、野菜がたんなる付け合わせではなく、メイン・ディッシュともなっていた。「アルプスの向こう側の人々が言うには、サラダの類は、もっぱら食い意地の張ったイタリア人が食べる。イタリア人は緑の葉を食べる動物たちから食べ物を奪っている」と、16世紀のある著述に書かれている。また、イタリア人が肉よりも野菜や果物をよく食べる理由について、「美しきイタリアではフランスやイングランドほど肉類が豊富でないこと、1年のうち9か月も続く暑さのため肉にうんざりしてしまう」とも書かれている。中世以来、イタリア料理は野菜の利用法が多い点で、ほかのヨーロッパ料理をはるかに越えていた。