オペラはイタリアで誕生した音楽劇、波乱万丈の物語が展開します。しかし、多くの日本人は敬遠しがち、クラシックファンの中でもオペラに関心ある方は少数。理由として、演奏時間が長い、うたわれる歌詞が馴染みのない外国語(ドイツ語・イタリア語)、ストーリーが仰々しい、などが考えられます。あまり構えることなく、純粋に音楽としてBGM的に流していれば、10~15分くらいできっと、気に入った旋律に出会えることでしょう。「ラ・トラヴィアータ」「イル・トロヴァトーレ」など、カタカナ・タイトルの意味を調べるとイタリア語への関心も芽生えます。私マルコがCDやTV放映で出会った作品(まだ僅か)を紹介していきます。


オペラの歴史・種類


音楽と演劇の中間的様式 芸術ジャンルが未分化(音楽・舞踊・演劇) 16世紀末、ギリシア悲劇復元の試みからフィレンツェで誕生。 最古のオペラ《ダフニス》1598年上演  今も上演される最古の作品はモンテヴェルディ《オルフェオ》が1607年マントヴァで上演

ヴェネツィア ナポリでも発展  オペラの歴史上重要なことの1つにアリアとレチタティーヴォの分離がある 

  • レチタティーヴォ⇒「叙唱」 自由なリズムをもち、話し言葉の抑揚に従って独白、対話を行う歌唱形式
  • アリア⇒器楽による伴奏付きの独唱曲 劇的な展開の中で、あるきわだった感情を表現する
  1. オペラ・セリア・・18世紀の主要なオペラ様式 神話や歴史物などを題材にしたシリアスな内容 3幕構成 レチタティーヴォとアリアの交代を中心に構成される
  2. オペラ・ブッファ・・18世紀のイタリアで流行した喜歌劇 日常から題材をとり、原則として1日のうちに起こったできごとによって物語が展開する 3幕のオペラ・セリアの幕間にインテルメッツォと呼ばれる喜劇が上演されたが、次第に独立して上演、オペラ・ブッファへと発展した
  3. オペレッタ・・オペラ・ブッファからはじまり、19世紀半ば以降に広がった軽喜歌劇 ハッピーエンドのラヴ・ロマンスで歌あり台詞あり踊りありの娯楽性の強いもの
  4. ヴェリズモ・・19世紀後半から20世紀初頭、神話や英雄物語ではなく、その時代の現実に起こりうるできごとを題材にして、人間の生の真実に迫る劇的表現を求めた
  5. オペラの中の器楽曲・・序曲(導入の役割を担う管弦楽曲) インテルメッツォ(間奏曲:オペラの途中に挿入される短い器楽曲 情景描写の役割を果たす)
  6. ベル・カント(唱法・オペラ)・・「美しい声」の意で18世紀に成立したイタリアの歌唱法 劇的表現やロマン的抒情よりも音の華麗な美しさ、むらのない柔らかな響き、なめらかな節回しに重点がおかれ広い音域にわたる自然な発声が必要。最盛期は18世紀末ないし19世紀初頭で、ロッシーニ、ベッリーニ、ドニゼッティらによって書かれた作品がベル・カントの典型


イタリアほぼ全市町村にオペラ専用の劇場が点在。シーズンはだいたいは冬期 3ヵ月から5・6ヵ月 ヴェローナ:アレーナやローマ:カラカラなどの城塞跡で行われる野外劇場のシーズンは8月 戦前と戦後10年、1950年代位まではイタリア中がオペラに熱狂していた、ということですが、21世紀の現在、まさに娯楽の多様化、オペラ人口は全人口の10%を下るいっぽう・・ファン層は40代以上の年代が圧倒的です。旅行者は訪れた町の劇場前でポスターを見るにつけ、興味をかき立てられます。私マルコの現地オペラ体験はカラカラ大浴場跡での『アイーダ』公演だけですが、旅行中チャンスがあれば鑑賞したい!


イタリアで誕生した総合芸術=オペラの楽しみ方~旅の楽しみが増える!~

音楽評論家・故吉田秀和氏はその著『オペラ・ノート』で「僕はオペラというものを、筋のある芝居でところどころ美しい歌が入っている作品というのではなく、一つ一つの曲がそれなりに一つの作品だといえるけじめをもって作られていて、初めから終わりまで一貫して聴かれなくてはならない作品だというふうに考えている。」と書いています。”一貫して聴かれなくてはならない”は尊重したいご意見ですが、家庭(CD・DVD)で鑑賞する場合は、一日目第一幕、二日目第二幕・・もありだと思います。

  • 一幕30~40分は神経を集中させる、他の事を考えたり、中断したりするとどんなに素晴らしい歌声もメロディもただの雑音になってしまいます。
  • 劇場で鑑賞するように、まわりを暗くしたり、集中できる雰囲気作りを演出、積極的に楽しむことを心掛けましょう。
  • 歌手や演奏の批判や比較は批評家におまかせ、可能なら対訳や解説、字幕に目を通す程度でオペラの世界に没入しましょう。
  • 特別な知識や教養は全く不要です、緊張感のある歌声、ロマンティックなメロディ、劇的な音楽そして人間ドラマを楽しみましょう。

映画にくらべて鑑賞機会が稀少です。DVD(TV放映によるメトロポリタンオペラなどを録画したもの)、CDによる鑑賞済の作品を作曲家(年代)順に並べます。CDでの鑑賞のメリットは対訳で歌詞のイタリア語が確かめられる点です。鑑賞後の感激を忘れない、未見の方に作品の魅力を紹介したい、この2点を目的として、作品背景・あらすじ・一口メモ(人気度やエピソード、聞き所など)を書いていきます。演奏者(歌手・指揮者・楽団)についてはノーコメントです。


ロッシーニ 『湖上の美人』(2幕)         La donna del lago  イタリア語台本トットーラ

1819作曲 同年9月24日 ナポリ:サン・カルロ劇場で初演

概要:台本はW・スコットの同名小説 舞台は16世紀半ばのスコットランド 狩人ウベルト(変装した国王ジェームズ5世)は、美しい娘エレナに一目惚れ、しかし彼女は反乱軍側の騎士マルコムと愛を誓いあっている。一方、エレナの父ダグラス卿は反乱軍首領ロドリーゴと娘を結婚させようとする。反乱軍は敗北、ダグラスたちは捕らえられる、彼女は助命を懇願しに国王のへ・・・王は自分の変装を明かし、悲しむエレナをみて処刑をやめてすべてを許し、自分の愛を諦め、エレナとマルコムの結婚を祝福する。

一口メモ:ロッシーニは1810年代の後半、オペラ・セリアの力作を続々と生み出した。この作品もその中の1つで、重唱や合唱が重要な役割を果たしいて、第1幕「夜明けの唄」はペーソスに溢れ、フィナーレの大アリア《この素晴らしい瞬間に豊かな愛情が》は心をときめかせてくれる。 台本の基になっているウォルター・スコットの詩の一部はシューベルトの「アベ・マリア」の原詩となった 若くして失意のうちに世を去ったジェームズ5世の娘がメアリ・スチュアート(マリア・ストゥアルダ)、16-17世紀のイングランドの歴史はオペラのテーマに取り上げられる 訳名には明治ロマン派の香りが漂う


ロッシーニ 『セビリヤの理髪師』




ドニゼッティ 『マリア・ストゥアルダ』(3幕) Maria Stuarda  イタリア語台本バルダーリ

原作シラー 1834年作曲 同年10月18日 ナポリ:サン・カルロ劇場で初演 演奏時間:約2時間

概要:舞台は1587年のイギリス イングランド女王エリザベッタ(Ms)は、臣下のレスター伯爵(T)に思いを寄せているが、彼はスコットランド女王マリア・ストゥアルダ(メアリー・スチュアート)(S)を愛している。マリアは英国女王の地位を狙ったとして幽閉されているのだが、伯爵は女王に彼女の赦免を願う。エリザベッタは嫉妬からマリアを辱め、耐えきれなくなったマリアはエリザベッタが実は庶子であることを指摘、怒りに燃えたエリザベッタは彼女に死刑を言いわたす。マリアはエリザベッタを許すことを言い残し、死刑台にのぼる。

一口メモ:16世紀のイギリスの歴史はドラマチック 2人が実際に対決したという史実はないが、エリザベッタとマリアの2幕の緊迫した二重唱には大きな迫力がある


ドニゼッティ 『連隊の娘』(2幕)        La fille du regiment フランス語台本バヤール

1840年作曲 同年2月11日 パリ:オペラ・コミック座 作曲者の指揮により初演 秋にはミラノでイタリア初演(イタリア語)

概要:舞台は1815年、ナポレオン戦争の頃のティロルとパリ 戦場である連隊に拾われて成人した娘マリー(S)は、今は酒保で働いている。彼女は自分の命の恩人である若者トニオ(T)と愛し合う。2人は別れ別れになるが、やがて大尉に昇進したトニオが、パリのマリーの所に現れる。彼女がビルケンフェルド公爵夫人(S)の娘であることが明らかになり、軍曹シュルピス(B)らの見守る中、2人は晴れてめでたく結ばれる。 

一口メモ:ドニゼッティ、フランス時代の作品 マリーとシュルピスが陽気に歌う活発な《連隊の歌》が楽しい




ドニゼッティ『ランメルモールのルチア』 (3幕) Lucia  di Lammermoor  台本カンマラーノ

原作W・スコット 1835年作曲 同年9月26日 ナポリ:サン・カルロ劇場で初演 演奏時間:約2時間  概要:舞台は17世紀 スコットランド ランメルモールの領主エンリーコ(Br)の妹ルチア(S)は、ひそかにエドガルド(T)と愛し合っている。自分の仇敵であるエドガルドと妹の仲を知ったエンリーコは偽の手紙を使って妹に政略結婚を承諾させる。婚礼の席に現れたエドガルドに罵倒されたルチアは新婚の夜に夫を刺し殺して狂死、エドガルドも自分の過ちを知り、エンリーコとの決闘の前に自害する。

一口メモ:オペラ・セリアの傑作 ルチアのアリア「あの方の甘い声が」は、当時の多くの作曲家によって作られた数々の「狂乱の場」の最高峰に位置する 高度な歌唱力と芸を要求される 第1幕ルチアとエドガルドの二重唱《ゆるしておくれルチア》⇒イタリア・オペラ屈指の二重唱 第1幕フィナーレの六重唱 結婚式にエドアルドが乗り込んで来る場面 六人六様の気持ちを折り込んだ最大のクライマックス ドニゼッティの手腕がひかる 第三幕ルチアのアリア《優しいささやきが》狂乱の場⇒気がふれたルチアが、約17分にわたってひとり芝居をしながら歌う大曲で数あるソプラノのアリアの中でも難曲中の難曲とされる


ドニゼッティ 『愛の妙薬』(2幕)      L'ELISIR D'AMORE   イタリア語台本ロマーニ

スクリーブの『惚れ薬』からの台本 1832年作曲 同年5月12日 ミラノ:カノッビアーナ座で初演(スカラ座のシーズンは終わっていた) 演奏時間:約2時間

概要:舞台はスペイン、バスク地方 金持ちの農場主で村一番の美女アディーナ(S)に想いを寄せる純朴な若者ネモリーノ(T)は、いんちき薬売り、ドゥルカマーラ(B)から惚れ薬を買って飲むが、うまくゆかない。兵隊を連れてやってきた軍曹ベルコーレ(Br)も彼女に一目ぼれ、結婚の契約までかわすが、結局アディーナはネモリーノの真心にうたれ、彼を夫に選ぶ。ロッシーニと同じく悲劇と喜劇のいずれにも才能を発揮したドニゼッティ、悲劇の代表作が『ルチア』であるとすれば喜劇はこの作品。「恋の成就するという妙薬」を中心にくりひろげられるロマン的な要素の強いオペラ・ブッファの傑作

一口メモ:幕切れ近くでネモリーノが歌う《人知れぬ涙》(第2幕23曲)はイタリアオペラの名曲アリアとして知られています。情緒あふれるメロディが美しい。この曲を加えようとした作曲者ドニゼッティと、劇の緊迫性から反対した脚色者ロマーニの仲が破れてしまった・・・とか




ベッリーニ 『清教徒』(3幕)           I puritani di Scozia  イタリア語台本ペーポリ

1834-35年作曲 1835年1月25日パリで初演 演奏時間:約3時間   概要:舞台は清教徒革命時代(1649年頃)のイングランド南西部プリマス近郊 清教徒でありながら王党派の騎士アルトゥーロ(T)を恋するエルヴィーラ(S)は清教徒軍の司令官である父親の意向でリッカルド大佐(Br)と結婚させられることになっていたが、伯父ジョルジョ(B)の説得もあって、アルトゥーロとの結婚が許される。ところが城中に幽閉されていた故チャールズ1世の王妃を義務感から救い出そうと花嫁と見せかけて逃走、これを裏切りと思ったエルヴィーラは狂乱状態になるが王妃救出に成功したアルトゥーロと再会すると正気にかえり、最後にはめでたく結ばれる。

一口メモ:ベッリーニ最後の作品 ヒロインが可憐なアリアから至難な狂乱の場までさまざまなニュアンスで歌うことが求められる テノールには高音が求められ、敵役のバリトンや渋いバスの役どころにも流麗なアリアの歌いどころがある 第一幕アリアから五重唱と合唱《おお、いとしい人よ、愛がしばしば》⇒一度聴いたら忘れられない美しさ 第二幕アリア《優しい声が私を呼んでいた》狂乱の場 随所で主役のアリアが五重唱、四重唱にとけこんでゆき、緊迫感と優美さが隅々まで行きわたっていく


ベッリーニ 『ノルマ』(2幕)        Norma  イタリア語台本ロマーニ

1831年作曲 同年12月26日ミラノ:スカラ座で初演 演奏時間:約2時間30分  概要:紀元前50年頃のガリア(現在のフランス)が舞台 共和政末期のローマがガリアの属領化をすすめている ローマ総督ポッリオーネ(T)が、ドルイド教(ガリアのケルト族は神聖な森の樫の木を神木として祭壇を設けて崇め、神官の下に各地域ごとに祭政一致の体制をとっていた)の高僧オロヴェーゾ(B)の娘で尼僧長ノルマ(S)に2人の子供を産ませたにもかかわらず、尼僧のアダルジーザ(S・Ms)に心を奪われる、という三角関係を描いた悲劇。ポッリオーネに裏切られたノルマはいったん復讐に立ち上がるが、最後に自分の罪を告白し、真の愛に目覚めたポッリオーネと共に劫火に身を投じて死ぬ。

一口メモ:ベッリーニ自身が”何を犠牲にしてもノルマだけは助けたい”と語ったほど美しい旋律と劇的な迫力を備えている 第一幕失われた愛が戻るようノルマが月の女神に祈るアリア《浄き女神》が有名、数あるソプラノのアリアの中でも気品と旋律美において傑出していて、歌手たちからは難曲中の難曲として恐れられ、かつ憧れられている。音楽家を目指してミラノにやってきたばかりの18歳のヴェルディはこの作品の初演を見て、大きな刺激を受けたといわれる。





レオンカヴァッロ 『道化師』(2幕)        I  pagliacci itariago イタリア語台本作曲者自身

判事をしていた作曲者の父が実際に扱った事件に基づく 1892作曲 同年5.21 ミラノでトスカニーニ指揮により初演 演奏時間:約1時間10分  概要:旅芝居一座の座長カニオ(T)は、美しい妻で女優のネッダ(S)が村の若者シルヴィオ(Br)と駈落ちしようとしているのを、座員トーニオ(Br)から知らされ、劇中劇で自分が演ずる役があまりに自分の立場に酷似していることから、芝居と現実の区別がつかなくなり、ネッダを舞台上で殺してしまう。芝居と現実が混乱し舞台上が現実の修羅場に一変する、観客総立ちの中でカニオは茫然自失、最後に一言「喜劇は終わりました」

一口メモ:『カヴァレリア・ルスティカーナ』と共に、ヴェリズモ・オペラの双璧をなす 世界で最も上演機会の多いオペラ 劇中劇の巧みな構成、迫真性のある音楽が素晴らしい、道化師たちの人間ドラマ  トニオのアリア《プロローグ》⇒オペラの紹介と道化師という職業の哀れさを歌うものでバリトンのアリアの中でも最も難しいアリアと考えられている カニオのアリア《衣装をつけろ》1幕⇒妻に裏切られても道化師の衣装をつけて舞台に出なくてはならない自分を呪い泣きながら歌う、劇的なアリア


マスカーニ カヴァレリア・ルスティカーナ』(1幕) Cavalleria Rusticana              イタリア語台本タルジョーニ&メナーシ

ヴェルガの同名の小説に基づく 1888-1890作曲 1890.5.17 ローマ・コスタンツィ劇場で初演 演奏時間:約1時間10分  概要:舞台は1890年頃の復活祭の日、シチリア島のある村 兵隊に行っている間に恋人ローラ(Ms)を馬車屋アルフィオ(Br)に奪われた若者トゥリッドゥ(T)が、彼を想う村娘サントゥッツァ(S/Ms)の止めるのも聞かずに、ローラと密会を繰り返し、最後にはアルフィオに決闘を迫られ倒れる。

一口メモ:日本語で「田舎の騎士道」と訳されている 1幕もの懸賞オペラ当選作、マスカーニの出世作 ヴェリズモ・オペラ(19世紀後半のイタリアに、ロマン的傾向を排し、現実主義を主張した文芸運動が興ったが音楽界でもその潮流に沿った作品が現れた)の先駆となった名作 間奏曲とアリ《ママも知るとおり》は特に有名 インパクトの強い内容で26歳の青年作曲家マスカーニは流行作家となった  トゥリッドゥのアリア《おお、白い服をまとった愛しいローラよ》⇒前奏曲の後舞台裏で歌われる情熱あふれるアリア 《お母さんあの酒は強いね》⇒決闘を控え、母との最後の別れを惜しんで歌う悲痛さあふれるアリア 幕開けの混成合唱《山々にオレンジの花は香り》⇒南国情緒豊かな合唱が観客をシチリアに誘う 間奏曲⇒ヴァイオリンの奏でる心にしみるメロディの美しさによって、単独でよく演奏される名曲となっている 「アヴェ・マリア」というタイトルで歌曲に編曲されている 




チレア 『アドリアーナ・ルクヴルール』(4幕) Adriana Lecouvreur   台本コラウッティ

1902作曲 同年11.6 ミラノ・リリコ劇場で初演 演奏時間:約2時間30分  概要:1730年のパリ社交界を舞台に、コメディ・フランセーズの人気女優アドリアーナ(1692-1730)にまつわる実話をもとにした恋愛悲劇 サクソニア伯爵マウリツィオ(T)をめぐっての、アドリアーナ(S)とブイヨン公爵夫人(Ms)の恋のさや当てに、老舞台監督ミショネ(Br)のアドリアーナへの密かな思いがからむ。公爵夫人の陰謀で、アドリアーナはかつてマウリツィオに贈ったスミレの花束を送り返され嘆くうち、仕込まれた毒が回って、駆けつけた恋人に手を取られながら息を引き取るという結末。

一口メモ:女優アドリアーナもサクソニア選帝侯マウリツィオも実在の人物で2人の熱烈な恋愛模様が劇的に描かれています。第2幕、第3幕のアドリアーナとブイヨン公爵夫人の迫力ある対決場面が最大の聴き所です。アドリアーナのアリア第1幕《私は創造の神のしもべ》、第4幕《侘しい花》、ブイヨン公爵夫人のアリア第2幕《苦しみの快楽》が特に有名です。