魂のジュリエッタ 1964 138分

監督フェデリコ・フェリーニ 主演ジュリエッタ・マシーナ

ジュリエッタ・マシーナが同監督つまり自分の夫の映画の主役をつとめてもう何作目でしょうか。ここでも『道』『カビリアの夜』と同じく純真無垢な女性を好演、ただし前2作の貧困女性ではなくリッチな妻役です。夫の浮気を疑ってから様々な妄想の世界に入っていくが、その世界を絢爛豪華な映像で一気に見せる。この映画はストーリーを追わず、理屈を求めず、美しいカラー映像とニーノ・ロータの音楽、そして女友達役で登場するサンドラ・ミーロの元気いっぱいな演技を楽しむべきです。T

太陽はひとりぼっち 1962 124分

監督ミケランジェロ・アントニオーニ 音楽ジョバンニ・フスコ 原題は『日蝕』 邦題は当時アラン・ドロン主演映画『太陽~』が大当たりだったからでしょう。アントニオーニ監督の愛の不毛3部作、は『情事『夜』『太陽はひとりぼっち』です。主役の心情を言葉ではなく風景や陰影で表現するので画面から目を離せません。モニカ・ビッティは新しい恋人ドロンとの仲もはかなく消えてしまうのだろうか、彼女の不安は冷たい空間の中でさらに高まる。彼が働く活気ある株式取引所は動であり彼女がさまようEUR(ローマの北部地域)の人工的な空間が静である。哀愁あふれるフスコの音楽はヨーロッパ映画音楽集に選曲されるほど素晴らしい。T



父パードレ パドローネ 1977 113分

監督パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ 原作カヴィーノ・レッダ(言語学者)自伝 出演オメロ・アントヌッティ サヴェリオ・マルコーニ ファブリツィオ・フォルテ  ナンニ・モレッティ  第二次世界大戦後のイタリア南部、サルデーニャ島。羊飼いのエフィジオは、仕事を手伝わせるため6歳の長男カビーノを小学校から連れ出す。その後カビーノは羊飼いになる修行だ、と人里離れた山小屋にこもる生活を強いられる。父にさからうと失神するほだ叩かれ、話し相手すらいない中、音に極度に敏感になりながら成長する。そして、20歳となり、父も有無の言えぬ徴兵で、彼は軍隊生活を体験、文字を読む必要に迫られた彼は知性を獲得、ようやく絶対的な父から解放される。封建的な家父長制とは愛情の片鱗さえ見せず父親が家族を暴力的に支配する因習、父パードレは主人パドローネ、これを打破するのは教育だった。タビアーニ兄弟の日本での劇場公開第1作、強烈なデビューでした。ナンニ・モレッティが学友役で出演。T

太陽の下の18才 1962 100分



鉄道員  1956 115分

監督ピエトロ・ジェルミ

50歳の鉄道機関士アンドレア(ジェルミ)は鉄道一筋に生きてきた男、幼い末っ子サンドロ(エドアルド・ネヴォラ)の誇りだった。だが、長男マルチェロや長女ジュリア(シルヴァ・コシナ)からは、その厳格な性格が嫌われていた。ある日、アンドレアの運転する列車に若者が投身自殺をする。しかもアンドレアは、そのショックにより赤信号を見すごし、列車の衝突事故を起こしかけ、格下げされてしまう。アンドレアは、ストライキを計画中だった労働組合に不満を訴えるが、とり上げられることはなく、酒に溺れ始める。彼の深酒はそのころから始まった。職場ではストライキが決行されたが、アンドレアは機関車を運転し、スト破りをする。アンドレアは友人達からも孤立し、やさしい妻(ルイザ・デラ・ノーチェ)のサーラとサンドロだけが救いだった。サンドロは酒場をめぐって父を探し出し、以前に父が友人たちとギターを弾いて歌った酒場に連れ出す。旧友たちは再びアンドレアを温かく迎え入れる。そして、家族との和解の兆しも見えてくる。しかし、すでに彼の体は弱り切っており、家族や友人たちとの幸せなクリスマスパーティを終えた夜、ベッドで眠るように息をひきとる。ある1人の初老の鉄道機関士とその幼い息子の目を通して、戦後のイタリア社会を描いた。全編に流れる人間愛によって見るものに涙と感動を与えてくれました。ピエトロ・ジェルミの最高傑作、映画史に残る作品です。D

テオレマ 1968 99分

監督ピエロ・パオロ・パゾリーニ 音楽エンニオ・モリコーネ 出演テレンス・スタンプフ、シルバーナ・マンガーノ、マッシモ・ジロッティ

ミラノの高級住宅街、ある一家5人ブルジョワ家庭に突然、青年がやってくる。青年のさわやかで若さ溢れる魅力に家族全員が惹かれ、青年(スタンプ)が逗留することを誰もが受け入れる。青年は一家全員(父・母・息子・娘・女中)と性的関係を持つ。そして青年が去って行くと家族は崩壊していく。青年とはいったいどんな存在なのか。スキャンダルな映画で有名なパゾリーニは今回も衝撃を与えた、イタリアでは一時、上映禁止騒ぎが起きたとか。パンフにある監督自身の言葉「神はスキャンダルなのです。キリストは、もし再来したとしたらスキャンダルとなるでしょう。彼は彼の時代にもそうであったし、今日生きていてもそうなるでしょう。映画の青年はイエスでもなければエロスでもない、それは具体的な徴候、人類をその誤った安泰から抜け出させる冷酷な神の、エホヴァの使者なのです。」C



デカメロン 1971 109分

監督ピエル・パオロ・パゾリーニ 原作ボッカチオ 音楽エンニオ・モリコーネ 出演ニネット・ダボリ コンチェッタ・ロマノ

ボッカチオの『デカメロン』には100の小話があります。原作は僧侶・教会・修道院などの堕落ぶりを艶笑喜劇として徹底的に暴露し、中世的束縛からの解放感溢れる、まさにルネサンスを代表する文学作品です。語りてたちはフィレンツェの紳士淑女たちで、物語の背景の多くはフィレンツェですが、パゾリーニはナポリをナポリを舞台の6話、その他2話を選んで映画にしました。第2日5話・第3日1話・第7日2話・第1日1話・第5日4話・第4日5話・第7日10話。ナポリはイタリアで文明禍されていない唯一の場所なので、ここでこそ、より庶民の目線で映像化できると考えたようです。難解な作品が多いパゾリーニの映画の中では分かり易さ抜群です。C

天使の詩 1966 105分

監督ルイジ・コメンチーニ 音楽ラファエレ・ギグリャ 出演アンソニー・クエイル ステファノ・コラグランデ シモーネ・ジャンノッツィ

フィレンツェ駐在の英国領事ダンカンとその幼い二人の息子の物語。兄のアンドレアは8歳、弟のミーロは4歳、感受性が強く、父の愛情を病弱な弟に奪われてひたすら亡き母をしたうアンドレアと、父の間に生まれた小さな誤解(原題は『誤解』)が取り返しのつかない悲劇を生む。アンドレアはことごとに父に誤解されてゆく、瀕死の重傷を負ったアンドレアは「このまま死にたい、死んだらママのところに行けるんだ」と言ったところで父親は誤解を悟り涙にくれる。少年の母を想う心をここまで深く描いた映画はありません。観客は涙が枯れてしまうほどですが暖かな気持ちになれるのは少年たちの演技が素晴らしいからでしょう。C



洞窟 2021 93分

監督ミケランジェロ・フランマルティーノ

1961年 若い洞窟学者の一団が南部ポリーノ山への探査に入った。チェルキアとサン・ロレンツォ・ベッリッツィの間にあるビフルト洞窟をもぐる。ついに地下687mの地底に到達した、当時、世界で3番目の深さだった。この映画は探検の主役となった人たちに捧げられるている。イタリア南部の山岳地帯、村の風景、老羊飼い、すべてが美しく、どのショットもそのまま額縁に入れたくなるほど・・暗闇に浮かぶ焚き火と羊飼いの小屋が現実に引き戻してくれる、洞窟内は時間が止まってしまったような錯覚に陥る。調査隊の一員が洞窟の地図を完成させるフィナーレで調査隊の達成感が表されている。ベネチア国際映画祭審査員特別賞 T

特別な一日   1977  110分

監督エットーレ・スコラ 出演ソフィア・ローレン マルチェロ・マストロヤンニ

出演者二人は『昨日・今日・明日』から『ひまわり』まで監督デ・シーカのもとで、名コンビぶりを発揮していきましたが、この作品で二人の共演は最後の華を咲かせました。この二人が見せる数々のドラマは世界の映画ファンを永遠に魅了し続けます。ファシズム政権下、1938年、ヒトラーがローマにやって来るという記念すべき日。式典が行なわれるその日は市民の殆どが広場ヘと赴いた。アントニエッタ(ローレン)は、六人の子供を持つ主婦。夫は、ムッソリーニの信奉者でファシズムに洗脳されたイタリア国民の典型ともいえる人間だ。アパートに一人残された彼女は、いつものように家事に追われる、九官鳥に餌をやるのも仕事の一つだ。その鳥がかごから飛び出し向かいの階段にとまった。そのすぐそばの部屋に男の背中が見え、彼女は大急ぎで彼の部屋を訪ねた。バルコニー、中庭が劇的効果を生む。彼の助けをかりて、鳥をつかまえた。男はガブリエレ(マストロヤンニ)と名のり、陽気に彼女に話しかけてきた。アントニエッタをダンスに誘い、二人はルンバを踊った。信じられないひとときだった。管理人の老女が訪れてきて「あんな売国奴とつきあうなんて」とアントニエッタを非難して帰っていった。洗濯ものをとりこむために屋上へ上がった彼女、なだめるように追って来たガブリエレと屋上で抱きあう彼女。アントニエッタは言った。「男なんて、みんな同じよ」。その言葉に、ガブリエレが口走った。「ぼくは違う。ぼくはホモなんだ」……思いがけない告白に狼狽し、彼女は彼の頬を打って部屋にかけおりた。しかし、時がたち心が静まると、いつも侮辱をうけてきたであろう男の心が痛いほど彼女にわかってきた。彼女も同じように、冷たい夫との生活の中で、知らぬ間に心が閉ざされていたのだ。彼女は彼の部屋を訪れ、お互いに、いたわり合うように愛しあった。夜、家族とのいつもの夕食を済ませた後、窓辺に立つアントニエッタ。外には、連行されてゆくガブリエレの姿があった。特別な一日が終わり、また明日がやってくる。D



ドゥ・ザ・ライト・シング  1989 120分

米映画 監督スパイク・リー 脚本スパイク・リー 出演ダニー・アイエロ スパイク・リー  ニューヨーク、ブルックリンのイタリア人が経営するピザ屋を舞台に、そこに暮らす人々を描く。暑さもピークに達したころ黒人の若者たちが消火栓で水浴び、その水が白人の車にかかった事から白人警官が出てきて、次第に騒ぎは拡大、町に住むイタリア系、プエルトリコ系、韓国人、黒人らが人種問題で口論を始める。複数の人種のコミュニティの存在感が感じられるだけでなく、暴力がエスカレートしていく過程が鮮烈に描かれていて監督・脚本・出演のスパイク・リー(この作品がまだ3作目)は多くの賞をいただきました。イタリア人役ダニー・アイエロの熱演が印象的です。。C 

ドッグマン 2018 103分

監督マッテオ・ガローネ 出演マルチェロ・フォンテ エドアルド・ペッシェ アダモ・ディオニージ

ガローネ監督が『ゴモラ』で見せた寂寥感ただよう町をこの作品では海辺に設定した。80年代、実際に起きた事件から着想を得たドラマ。イタリア版アカデミー賞ドナテッロ賞で作品賞・監督賞など9部門を受賞。犬のトリミングサロン「ドッグマン」を営むマルチェロ(マルチェロ・フォンテ)は、隣人とも食事会やサッカーを通してなんとかうまくやっている。別居中の妻がたまに連れてくる娘と会うのが楽しみだ。しかしその裏では、暴力的な友人シモーネとの従属的な関係に悩まされていた。シモーネの暴力は尋常ではなく町の厄介者だった。シモーネの悪だくみに協力を強いられたマルチェロは結果的に逮捕、罪を被って牢獄に入る。全てを失ったマルチェロは出所後、衝撃的な結末へと向かう。吹けば飛ぶような弱々しい、小心者を演じたマルチェロ・フォンテは第71回カンヌ国際映画祭で主演男優賞を獲得。T



ドイツ零年 1948 78分

監督ロベルト・ロッセリーニ 俳優は全員素人 爆撃により瓦礫の山と化したベルリンにカメラを持ち込んで撮影

大戦直後の廃墟のベルリン 少年エドムンドは病気の父と姉と住んでいる。姉は身体を売っている。兄が帰還するが病気で働けない。少年は熱狂的なナチ党員の旧師に会い、彼の口から「弱者は生きる価値がない」と吹き込まれ、エドモンドは父の毒殺を実行する。病人は生きる資格がないのだ。しかしその後、結果を恐れた旧師は逃亡、瓦礫のベルリンをさまよい歩くエドムント少年、サッカー遊びに入れてもらえず、父親の葬儀に向かう真実を知らない姉たちの呼びかけのある中、少年は絶望して自殺する。生き残ったナチズムに対する警告の映画とも言える。少年は冷酷な社会に理解を求め彷徨い歩くが救いの手が差し伸べられることもない、取り巻く現実はあまりに過酷だった。ロッセリーニのネオレアリズモ、戦争三部作『無防備都市』『戦火のかなた』『ドイツ零年』のうち、この作品が最も胸に突き刺さりました。D

トスカーナの休日 2003 113分

監督オードリー・ウェルズ 出演ダイアン・レイン サンドラ・オー リンゼイ・ダンカン        離婚で家と生活を失い、傷心旅行でトスカーナを訪れた米国人女流作家フランシス。そこで築300年の古い屋敷に魅せられ、衝動買いをした彼女は、親切な不動産業者マルティニの助けを借りながら、家の修復に取り組むうち、少しずつ町の人々とも打ち解けて癒されてゆく。妊娠中の友人の訪問、ローマで出会ったマルチェロとのデート、フェリーニの『甘い生活』を夢見る女性との出会いなど、各エピソードはトスカーナの明るい光に包まれた絵のような風景の中で展開する。フィレンツェから列車1時間のコルトーナの街で撮影されいます。監督・脚本オードリー・ウェルズのイタリア愛が感じられて好感が持てましたし、フランシス役のダイアン・レインの飾らない演技によって爽快な後味を残すドラマとなりました。ダイアン・レインは英国の名優ローレンス・オリヴィエと『リトル・ロマンス』79で共演した幸せな少女、という印象でしたが、その後の女優人生を着実に歩んできたことがわかります。少女時代から円熟期まで映画の世界で存在が知られた稀有な女優たち(ジュディ・ガーランドとジョディ・フォスター)の仲間入りができそうです。



ドン・ジョヴァンニ~天才劇作家とモーツァルトの出会い~ 2009 127分   伊西合作

監督カルロス・サウラ 撮影ヴィットリオ・ストラーロ 出演ロレンツォ・バルドゥッチ リノ・グワンチャール

『カルメン』などの音楽映画で知られるスペインの巨匠サウラ監督がモーツァルトと組んでオペラの名作を次々と生み出したイタリアの劇作家ダ・ポンテの生涯にスポットを当て、オペラ「ドン・ジョヴァンニ」の誕生秘話を描いた。オペラの劇中場面を巧みに交錯させた物語構成、伝説的カメラマン:ヴィットリオ・ストラーロの幻想的絵画的映像(冒頭のドン・ジョヴァンニの石像を載せたゴンドラがゆくヴェネツィアの運河やカーニバル、場面転換時のストップモーション)が素晴らしい。かつては聖職者だった劇作家、ダ・ポンテは自らの放蕩に満ちた生活が原因で、ベネツィアを追放され、ウィーンへとやって来る。彼は友人カサノヴァの紹介で、新人作家のモーツァルトらと出会い、互いの才能を刺激しながら名作を生み出す。体調を崩し気味のモーツアルトを支える妻コンスタンツェ、稀代のプレイボーイ:カサノヴァの晩年、啓蒙専制君主ヨゼフ2世と宮廷楽長サリエリなど、エピソードが一杯です。モーツァルトやヨゼフ2世がイタリア語を母国語のように操るところも面白い。

トレヴィの泉で二度目の恋を 米映画 2014 97分

監督マイケル・ラドフォード 出演シャーリー・マクレーン クリストファー・プラマー

撮影時83歳のプラマーと80歳のマクレーンは、ともにオスカー受賞者。

妻を亡くし、生きる気力を亡くしたフレッドは娘のすすめでアパートに引っ越すことに。隣の部屋には、魅力的だがやや変わり者のエルサが住んでいた。映画『甘い生活』のマストロヤンニとアニタ・エクバーグのようにトレヴィの泉に行くこと、それがエルサの長年の夢だ。自由奔放なエルサと偏屈なフレッドという正反対の2人は最悪な出会いを果たすが、一緒にレストランに出かけ、ダンス教室を訪れるうち、フレッドは笑顔を取り戻し、次第に心を通わせていく。気づけば彼女に恋をしていた。しかし、エルサが病に侵されていることを知り・・ローマ・トレヴィの泉へ・・・

「イル・ポスティーノ」「ヴェニスの商人」のマイケル・ラドフォード監督が“大物カップル”のロマンティックコメディを撮りました。『噂の二人』・『サウンド・オブ・ミュージック』から始まる二人の出演映画のラインアップは世界中の映画ファンに幸せと感動をもたらした作品に満ちています。この2人であればこそ、恋をするのに遅すぎることなんてない、人生を楽しんでほしい・・・観客は思ってしまいます。



時の重なる女 2009 95分

殿方は嘘つき 1932 62分